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2～3年前にマスターに淹れてもらったイエメンの珈琲が忘れられない。生涯飲んだ中で、格別においしい珈琲だった。あのうまく表現すらできない、どのような言葉ですら陳腐になってしまう、素晴らしい香味。もう二度と同じ豆は出てこないだろうという話だ。 ああいう珈琲豆は、別格だ。その豆だけで文句なく100点満点だ。全てのバランスが取れている。 だけれども、ああいう格別の珈琲を飲んでしまうと気づくことがある。 スペシャルティコーヒーは、最上級の珈琲豆だけあって、確かに、間違いなく美味しい。どのような銘柄の豆であっても、とても良い。だけれどもイエメンと違って、全てのバランスが取れているわけではないことに気付く。 山田龍太珈琲 はスペシャルティコーヒーのブレンドなのだが、単体の珈琲豆よりもブレンドの珈琲豆の方が、美味しいのだ。 スペシャルティコーヒーだからこそブレンドが美味しいのだろう。スペシャルティコーヒーだから、それぞれの銘柄の珈琲が、その特徴が、雑味なく出ている。そのより澄んだ香味を足し合わせることで、全てのバランスを取る、という作業ができるのだろう。 珈琲考であった。